歯周病治療
- Q歯周病とはどんな病気ですか?
- A口腔内の細菌が歯と歯ぐきの間に入り込み、歯ぐきに炎症を起こさせ、顎の骨を溶かしてしまう病気です。
軽度なものも含めると日本人の40歳以上の約8割がこの病気に罹っています。
初期段階では症状はほとんどありませんが、進行すると歯ぐきが腫れたり、出血したり、痛みが出たり、歯がグラグラしたり、口臭が酷くなってきたりします。
歯周病を予防するには、正しい歯磨きや歯間ブラシの使用、定期的な歯科検診が大切です。
また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を患っている方は、歯周病にかかりやすくなるので、特に注意が必要です。 - Q歯周病はいつごろから起こる病気ですか?
- A歯周病の原因菌が定着し始めるのは、15歳前後頃からといわれています。
歯周病罹患率は15-24歳が20%、25-34歳で30%、35-44歳で40%、45-54歳は50%、そして55歳以上は55-60%という割合になっています。
歯ぐき炎も含めると全体の80%程度の人がなんらかの歯周疾患に罹患しているという調査結果もあります。 - Q歯周病にはどんな人がなりやすいですか?
- A身体の免疫力低下が歯周病の進行に大きくかかわります。
歯周病を発症させる局所的原因として、プラーク(歯垢)量、歯石の沈着、歯ぎしり、くいしばり、歯並び、不適切な修復物などがあります。
全身的な原因として年齢、遺伝的疾患、成人病(基礎疾患)などがあります。
環境原因として、タバコ、栄養バランス、不規則な生活などが考えられます。
歯周病は予防することによって改善できますので、ご自身の生活環境改善やセルフケア、歯科医院での定期検診受診、歯石除去などを行ってください。 - Q歯周病はどんな治療をしますか?
- A歯周病の急性症状(腫れや痛み)を緩解させる治療はありますが、歯周病によって溶けてしまった顎の骨を正常な元の状態に戻す治療法はありません。歯周組織再生療法というものがありますが、これは歯周病で失った骨の一部が再生されるのみです。
ですので、基本的には予防という考え方になります。
今の現状を維持していくために行うことは「口腔内からできるだけ歯周病菌を常時減らしておくこと」です。
つまり、日常生活におけるブラッシング(プラークコントロール)やプロフェッショナルケア(歯石除去)ということになります。 - Q歯がグラグラして痛くて噛めません。抜歯しないとだめですか?
- A歯の動揺度や歯周病の進行度合いによります。歯の根っこを支えている顎の骨が極度に吸収している(重度の歯周病)時は抜歯の可能性が高いです。
しかし、歯周病の処置を行って急性症状が改善するのであれば回避することも可能な時があります。 - Q歯周病の自覚症状はありますか?
- A歯ぐき炎や歯周炎の初期には、ほとんど自覚症状はありません。
サイレントディジーズ(静かな病気)とも言われるように、気付かないうちに進行していくのが歯周病の恐いところです。
歯ぐきが明らかに下がってきたり、歯ぐきが腫れたり、出血が止まらないような場合には病状が進行しています。
発見が遅れないようにするためにも、歯科医院での定期的な健診をお勧めします。 - Q歯周病の予防はどうすればよいですか?
- A歯周病の原因である細菌(歯垢や歯石)を取り除くことです。
細菌を除去するためには、歯ブラシやデンタルフロスもしくは歯間ブラシなどの歯と歯の間の清掃用具も使って歯垢を除去する必要があります。
ただし、ご自身で歯垢のない状態を維持することは難しいことです。定期的(3~4ヶ月に一度)に歯科医院に行って、自分では除去しきれなかった歯垢によってできる歯石を除去してもらいましょう。

「歯ブラシの時に出血する」
「歯ブラシの時に痛い感じがする」
「口臭がする」
「歯が長くなったような気がする」
「歯ぐきが腫れている」
「歯がグラグラするようになった」
このような症状をお感じになっている場合、あなたの歯は歯周病になっている可能性があります。
歯周病は口の中の細菌によって歯茎に炎症が起こり、歯を支える骨が壊されていく病気です。
ある調査で、歯周病は30歳代の方の70%以上の方が罹患し、40~50歳代の方においてはその50%で歯周病によって歯を失っていることが分かっています。
歯周病は初期段階で症状が自覚しづらく、無症状で悪化していくことがあるため、沈黙の病気(Silent disease)とも呼ばれる厄介な病気です。
また、虫歯同様に歯周病によって溶けてしまった歯槽骨を元に戻すことはできません。そのため、定期的なお口の衛生管理と予防を徹底することが大切です。
歯周病の進行段階

軽度歯周病
歯ぐきに炎症がみられ、ブラッシング時に血がでることがあります。
歯周ポケット(歯と歯ぐきの間)がやや深くなった状態で、歯を支える顎の骨(歯槽骨)が少しずつ溶かされ始めます。
中程度歯周病
炎症がさらに進行すると歯槽骨が半分近くまで破壊され、歯ぐきの腫れや出血がひどくなるほか、歯のグラつきなども感じるようになります。
ここまでの段階では歯を抜かずに治療で対応可能です。
重度歯周病
歯槽骨が半分以上破壊され、口臭がきつくなり、歯ぐきが退縮して歯のグラつきが悪化します。
治療をせずに放置すると、歯が抜け落ちることがあります。この段階までくると、抜歯が必要となります。
歯周病の基本的な処置内容

歯についたプラーク(歯垢)を取り除きます(プラークコントロール)。
毎日丁寧な歯磨きをしていてもどうしても磨き残しが出てしまいます。残ってしまった歯垢が歯にこびりつき、時間がたつにつれ固まることで歯石となりますが、当院ではスケーラーと呼ばれる器具を使い、こびりついた汚れを歯科衛生士がきれいに取り除きます。
歯垢や歯石を掃除し、歯の周りをきれいにした後、歯周病が改善されたかどうかも診断します。
歯周病の進行段階によっては薬の服用や、麻酔を使用して歯周ポケット内の奥の方についてしまっている歯石の除去を行ったりします。
ご自身でできる歯周病チェックリスト
歯周病の初期は症状がなく、自覚がないまま進行してしまうため、日々の歯の状態のチェックが重要になります。
下記の症状がある方は歯周病の疑いがあるので受診をおすすめします。
歯ぐきが赤く腫れている
口の中がネバネバする感じがする
歯茎から出血がある
歯がグラグラする
歯茎がかゆい
最近口臭が気になる
歯が浮いたような感じがする
歯の噛み合わせが変わった感じがする
歯周病と全身疾患との関係
歯周病はお口の中だけでなく、様々な病気・症状と関わりがあることがわかっています。
糖尿病

歯周病は糖尿病の合併症の一つと考えられてきましたが、重度の歯周病になることにより「炎症性サイトカイン」という物質が血液中で増加し、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害することで糖尿病を悪化させる恐れがあることがわかっています。
ですが、逆に歯周病を治療することによって糖尿病を改善できる可能性があるということも研究によって立証されています。
低体重児・早産

妊娠することで女性ホルモンの一種であるエストロゲンが体内で多く生成されます。
エストロゲンは歯周病菌の増殖を促し、歯肉を形作る細胞を侵食してしまうといった作用があります。
近年の研究で妊娠中の女性が歯周病に罹患していると低体重児および早産の危険性が高くなることがわかっており、通常時に比べて7倍にものぼると言われています。
妊娠中は特に注意してお口の衛生管理を行う必要があります。
動脈疾患(心筋梗塞・脳梗塞など)

歯周病菌によって動脈硬化を誘導する物質が体内で生成され、血管内にプラーク(脂肪性沈着物)を発生させることで血液の通り道を狭くしてしまうことが近年の研究でわかっています。
歯周病をそのままにしておくと、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈疾患を引き起こすリスクが高まる可能性があるため、早期の治療が重要になります。
誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは食べ物などの異物が誤って気管や肺に入り込んでしまうことで発症する肺の炎症です。
高齢者における一番の死亡原因となっています。
食べ物を飲み込む際に誤って肺に入ってしまうと、食べ物に付着した歯周病菌が一緒に入り込んでしまいます。
その歯周病菌が肺で炎症を起こすのです。誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは歯周病菌であるため、歯周病ケアが発症の予防に重要です。
歯周病の予防を行い歯を守りましょう

歯周病の進行は自覚症状が少なく、放置しておけば様々な全身疾患を引き起こす危険のある恐ろしい病気です。
虫歯や歯周病といったお口の病気にもっとも有効な方法が毎食後のブラッシングです。
正しい口内ケアを身につけ歯周病や虫歯を未然に予防し、口内を清潔に保つ意識を身につけましょう。
また、歯科医院での定期的な衛生状態のチェックを受けることで、歯周病の早期発見・予防を行うことが大切です。
歯周病Q&A